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傷病手当金の計算式は条文にある

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2026/8/26公開

傷病手当金の額は「給料の3分の2くらい」と説明されることが多いのですが、何を3分の2にするのかは決まっています。健康保険法99条2項に書かれています。

3分の2にするのは標準報酬月額

計算の順序はこうです。

  1. 支給を始める日の属する月以前の、直近の継続した12か月の標準報酬月額を平均する
  2. その額を30で割る(5円未満は切り捨て、5円以上10円未満は10円に切り上げ)
  3. その3分の2にする(50銭未満は切り捨て、50銭以上1円未満は1円に切り上げ)

3分の2にするのは月給そのものではなく標準報酬月額です。残業代や通勤手当の扱いが違うので、手取りの3分の2にはなりません。

加入12か月未満なら別の計算

同じ2項のただし書きに、標準報酬月額が定められている月が12か月に満たない場合の規定があります。次の2つのうち少ないほうを使います。

何を使うか
1号実際にある月の標準報酬月額を平均した額の30分の1
2号前年度9月30日の全被保険者の標準報酬月額を平均した額の30分の1

入社して間もない人は、自分の給与が高くても2号で頭打ちになることがあります。全被保険者の平均という、自分とは関係のない数字が上限になる形です。

  1. 労務に服することができなくなった日
  2. 3日待期

    99条1項は「起算して三日を経過した日から」支給すると定める

  3. 通算1年6か月支給期間

    通算なので、途中で復職した期間は数に入らない

  4. 支給期間が終わる
傷病手当金がいつからいつまで出るか(健康保険法99条)。数え始めるのは労務に服することができなくなった日

待期は3日

99条1項が「労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から」と書いています。最初の3日は出ません。

この3日は連続している必要があり、有給を使った日でも数えます。待期の数え方は傷病手当金は退職後も受けられるかにまとめました。

期間は「通算」1年6か月(健康保険法99条4項)

4項です。

傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から通算して一年六月間とする。

通算と書かれています。途中で復職した期間は数に入りません。出たり入ったりしても、支給された日を足して1年6か月に達するまで使えます。

以前は「支給を始めた日から1年6か月」で、復職期間も含めて時計が進む形でした。今は条文が通算になっているので、働ける時期に無理をして使い切る必要がありません。

給料が出ていると出ない

108条1項です。

疾病にかかり、又は負傷した場合において報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、傷病手当金を支給しない。

ただし書きがあり、受けられる報酬の額が99条2項で算定した額より少ないときは差額が出ます。一部でも給料が出ていれば全額止まる、という形ではありません。

出産手当金とは調整される

103条1項が、出産手当金を支給する期間は傷病手当金を支給しないと定めています。こちらもただし書きで、出産手当金のほうが少なければ差額が出ます。

2項に、出産手当金を支給すべき場合に傷病手当金が支払われたときは、その傷病手当金を出産手当金の内払とみなすと書かれています。二重取りにならないよう精算される仕組みです。

障害年金を受けられるときも調整

108条3項です。同じ傷病で障害厚生年金を受けられるときは傷病手当金が支給されません。ただし障害年金の額のほうが少なければ差額が出ます。

障害基礎年金も受けられる場合は、両方を合算した額で比べます。4項は障害手当金の場合で、こちらは一時金なので、傷病手当金の合計額が障害手当金の額に達するまでの間は支給されません。

同じ傷病について公的な給付が重ならないようにするという組み立てです。

退職後も受けるには資格喪失前に受けていること

104条が継続給付を定めています。条件は2つです。

  • 資格を喪失した日の前日まで、引き続き1年以上被保険者だったこと
  • 資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていること

「受けられる状態だった」ではなく「受けている」と書かれています。退職日に出勤すると労務に服したことになるので、ここが崩れます。

なお1年以上の計算からは任意継続被保険者と共済組合の組合員だった期間が除かれます。任意継続に切り替えてから請求しようとしても、この条文には乗りません。任意継続そのものは任意継続をやめるにまとめました。

標準報酬月額はいつの給与で決まるか

計算のもとになる標準報酬月額は、毎月の給与そのものではありません。原則として4月・5月・6月に支払われた報酬の平均から決まり、その年の9月から翌年8月まで使われます。定時決定と呼ばれる仕組みです。

だから春に残業が多かった人は、1年を通じて標準報酬月額が高くなります。逆に春が閑散期の人は低いまま固定されます。傷病手当金の額も、この固定された等級に引きずられます。

給与が大きく変わったときは随時改定という仕組みがあり、3か月続けて2等級以上の差が出ると途中でも変わります。自分の等級がいつの給与で決まっているかは、健康保険証の保険者で確認できます。

申請は1か月ごとが多い

条文は請求の間隔を決めていません。実務では1か月ごとにまとめて申請します。

申請書には療養担当者(医師)の意見欄と、事業主の証明欄があります。どちらも自分では書けないので、記入を頼む時間を見込むことになります。

退職後の継続給付の期間に入っていれば、事業主の証明は不要になります。在職中の分と退職後の分で、必要な記入者が変わります。

時効は2年

健康保険法193条が、保険給付を受ける権利は2年で時効になると定めています。起算点は労務不能だった日の翌日で、1日ごとに進みます。

まとめて後から請求することはできますが、2年より前の日は消えます。体調が落ち着いてから手続きしようと考えている場合、ここだけ気にしておきます。

自分で見積もるとき

必要なのは直近12か月の標準報酬月額です。給与明細の控除額からは逆算しにくいので、健康保険証の保険者に問い合わせるか、会社の担当者に確認します。

ねんきん定期便や、日本年金機構のねんきんネットでも厚生年金の標準報酬月額を確認できます。健康保険と等級表は違いますが、おおよその目安にはなります。

まとめ

  • 3分の2にするのは標準報酬月額。手取りの3分の2ではない
  • 加入12か月未満だと、全被保険者の平均が上限になることがある
  • 待期3日は出ない
  • 期間は通算1年6か月。復職した期間は数に入らない
  • 給料・出産手当金・障害年金とはそれぞれ調整され、少ないときは差額が出る
  • 退職後も受けるには、資格喪失時に受けていることが要る

なお、この給付は休職しているかどうかを要件にしていません。休職制度が会社に無くても受けられます。就業規則との関係は休職制度は法律に無い。だから就業規則を見るにまとめました。

この記事で確かめたこと

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